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FUYUU

20140407

散ればこそいとど桜はめでたけれ
憂き世になにか久かるべき
 
わけもなくつらいよる
好きな曲をいつでも聴ける文明の豊かさに感謝する
ぽつんと浮かぶ水色の楕円は
苦悩秘めたる清々しい歌声に
やっと救われる命のひとつ
春の
浮つく暗澹たる気持ちは
冬の陰気なそれと違って
在り処をなくした感情は
確かにある鬱々としたものより
なんともやり切れず
気持ちの悪い微かな重さだけ残してく
軽くなっていく空気とともに
身体が軽くなるほど簡単ではなくて
そうだ
明日は空を見よう
天気予報は知らないけれど
青い空と白い雲の中に
身を委ねてみよう
空気の切れ間をみるんだ
空虚の中にある
命の集合を尊ぶ日があってもいい
言葉が薄まるのだけが現実じゃない
雨上がりの緑の深さ
土と草の青い匂い
雲が作り出す白の陰影
木の枝の孤独を癒す水の滴り
水晶体を通過した本当の世界
私はまだ
雲の間を歩いてゆけるかもしれないな