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FUYUU

20140401

紙や道具を買おうとホームセンターへ自転車を走らせる。ふとペットコーナーを覗いてみれば、ひとつひとつの命がガラス張りの四角いショウケイスに閉じ込められていて不思議な気持ちになる。犬や猫にどれほどの思考能力があるかは検討もつかないけれど、たとえ思考することが出来ないとしても、彼らには生きることへの痛切さがある。孤独への実体がある。我々は見ないフリをするのが得意だ。ショウケイスを眺めることしか出来ない私もまた、見ないフリを決め込む愚かなひとつの命である。命の重さとは何だったか。確かにあるのは物質ではない。切々とした感情だ。死人を前にした人々にあるのは、死の許されない生への痛烈な悲しみではないのか。

 

帰り道、下り坂から見える景色。桜の淡い色彩はオレンジに染まりゆく空に美しい輪郭を持たせていた。地平線の見えない街で、地平線に想いを馳せる。

 

踏切を通過していく電車に乗っている人々はまるで、ショウケイスに閉じ込められたペットみたいに思えて一人おかしくなってしまった。名前のない彼らにもきっと、切々とした感情があるんだろうな。